ヨーロッパの旅25 オランダでC先生のマスタークラス。

昨日からの続きです。

C先生は、A先生B先生とはまったく違ったレッスンでした。

C先生はアルメニア人。30代の女性です。先生のおばあちゃんが生きていた時代にトルコによる『アルメニア人虐殺』が行われ、シリアに逃れました。そのシリアも情勢が不安定になりオランダに逃れてきたという激動の人生。ご主人はホルン奏者です。

C先生のレッスンがすごく面白くて、レッスンにアラブの曲や先生が作曲した曲をわざわざ持参してくださいました。

日本ではあまりやる機会のないアラブのメロディーやアルメニアの曲についてのレッスン。

基本的にアラブの曲はメロディーは単音で、いろんな楽器が同じメロディーを鳴らすんだそう。

ただそれだと広がりがないので、先生がクラッシック音楽のようにハーモニーを加えて、さらにチェロカルテット用の編曲。

風景としては、朝焼けが出て朝の4~5時ぐらいになって起きてくるイメージ。

チェロカルテット用の曲ですが、

・先生
・子供
・友人

ひとりいない…。

もう一人はチェロを叩いて打楽器みたいな役割だからと言われ、

全員の視線が私の方に…。

やめてよやめて。ただの見物客なのに。

断りきれない雰囲気のまま、これを渡されました↓
ジャンベだかボンゴだか何ていうかすら分からない楽器…。

おぉ…。

何も考えずに

「アラブの曲って素敵だわぁ~」

なんてボンヤリしてたバチが当たった。

強制的に先生のリズム教室が開講。

マジですか…。

昔、飲み屋にいたときに急にセッションがはじまり、「何も楽器できません」と言ったら↑みたいな打楽器を渡された経験が。

しかもいろんなところで↑の楽器を渡されるので、もはや経験者・ベテランと言っても過言ではない。

でも先生、

私、物覚え悪いんですけど…。

なんて有無を言わせず、C先生によるアラブの打楽器のリズム教室が始まることに。

そして先生も若干、諦めムードでなんとか教室は終了。

そして私が叩くことに。

叩くんだけど、聞き馴染みのないメロディー、難しいリズムに悪戦苦闘。

打楽器というのは子供が音程を外しても、心がどんなに乱れても、それでも一定のリズムを刻み続けなきゃいけない。

これはまさしく修行。

この旅、最大の試練でした。

変な汗をたくさんかきました。

なんなら叩いてた記憶すらないよ。


そして先生が子供に
「ここからはあなたの即興でね」

子供
「えっ?そうなんですか?」

子供焦る。

そりゃそうだ。そんなの今までやったことない。アラブの曲ってジャズ要素もあるのか。

15~20分ぐらい同じようなメロディーをずっと演奏する。基本的にソリストが即興で演奏し、上手く演奏したら、曲の途中でもみんな拍手するそうです。

■ここから先生のお話↓

・アラブのメロディーはとても単純だけど、即興パートがものすごく難しい。なぜならそこで自分の能力を発揮するため。カデンツァだけでできているような音楽。

・歌詞が重々しい曲が多いので、それを感じさせないように軽い演奏をしている。

・アラブの曲は前奏で2分ぐらいズンチャカズンチャカ演奏して、歌になかなか入らないのも特徴。

・先生の家ではシリアの歌よりも、アルメニアの曲を多く歌っていた。

・先生のお友達でアラブ圏出身の子がいるけど、家族みんなでいろんな楽器を弾いていたので、どんな楽器でも弾けるし、メロディーを知っていれば、みんないろんな楽器で即興ができる。

・アルメニアはクリスチャンの国、教会でもアラブのメロディーが混じったような音楽を弾く。


などなど、聞いていた私は「音楽はやっぱり素晴らしい。」感動しっぱなし。

日本にいるとなかなかアラブやアルメニアの音楽について触れることもない。

そしてチェロという楽器の素晴らしさについても改めて実感。

クラシックの音も出せるし、ロックの音も出せるし、アラブのメロディーも出せる。

チェロってすごい。

なんならこのまま日本に帰らずに、オランダで安いチェロを買って子供と音楽の放浪の旅に出ようかと思ったぐらい。

そして私はいつだってジャンベだかボンゴだかを渡されるに違いない。

先生はレッスンの最後で、

「10~15年後にシリアに平和が戻ったら、シリアで一緒に演奏をしましょう。」

と言ってくださいました。

そんなこと言われたら、行くよ。絶対に。

めちゃくちゃ感動のレッスンでした。

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