第18回(2020年)東京音楽コンクールの弦楽部門でチェロの北村陽くんが第3位。そしてBS世界のドキュメンタリー 兄と奏でるノクターン~発達障害。

第18回東京音楽コンクールの弦楽部門でチェロの北村陽くんが第3位を受賞しました。

天才チェロ少年として名を馳せたあの北村くんもついにシニアコンクールに参戦です。


東京音楽コンクールは東京文化会館、読売新聞社、花王、東京都が主催。毎年、東京文化会館大ホールで行われています。応募資格は15歳~30歳。本選ではオーケストラと共演。公式サイトの結果はこちらから

【第1位】
前田 妃奈さん(ヴァイオリン、2019年第88回日本音楽コンクール第2位。併せて岩谷賞受賞。現在東京音楽大学付属高等学校3年生。特別特待奨学生として在学中)

【第2位】
佐々木 つくしさん(ヴァイオリン、2018年第87回日本音楽コンクール第2位、併せて岩谷賞、黒柳賞。東京藝術大学2年)

【第3位】(演奏順)
福田 麻子さん(ヴァイオリン、2018年第87回日本音楽コンクール第3位、第16回クロスターシェーンタール国際ヴァイオリンコンクール第2位。東京音楽大学を首席で卒業、同大学院2年に特別特待奨学生として在学中。)

北村 陽くん(チェロ、第10回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール優勝。桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)1年。奨学生として在学中)

有冨萌々子さん(ヴィオラ、2018年アントン・ルービンシュタイン国際音楽コンクールヴィオラ部門最高位(1位なし2位)。東京藝術大学を経て2017年からウィーン国立音楽大学へ)

【聴衆賞】
前田妃奈さん


です。いやぁ、もう出場者が豪華!私でも知っているぐらいの知名度の方がてんこもり。こちらも新型コロナの影響がある中、無事にホールで開催されたようでよかったです。このメンバーの中、北村くんは15歳で第3位入賞ってとんでもなく凄い。

学校別だと東京芸大系2名、東京音大系2名、桐朋系1名。ピアノもそうですが、ヴァイオリンも最近の東京音大勢の活躍っぷりは本当に目覚ましいです。


弦楽器というくくりになるので、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスが同時に競うのですが、過去の大会でチェリストの入賞者は

第1位
水野 優也さん(第13回)

第2位
上村 文乃さん(第5回)、加藤 文枝さん(第7回)、上野 通明さん(第10回)、笹沼 樹さん(第12回)、藤原 秀章さん(第13回)、三井 静さん(第15回)

第3位
アデル・亜貴子・カーンズさん(第4回)


過去の入賞者もとんでもなく豪華(2016、2019年の弦楽器部門は未開催)。そしてチェロで第1位を獲得してるのって水野くんだけなんですね、凄いわぁ…。


さて先日BSで放送されていた『BS世界のドキュメンタリー▽兄と奏でるノクターン~発達障害』を視聴。

内容としては

「音楽の才能を開花させていく発達障害の兄・ソンホ。母親はソンホにつきっきりで、弟コンギは疎外感を感じていた。仕事もうまくいかず、兄を馬鹿にし、母親には暴言…。しかし、母の代わりに兄のロシアへの演奏旅行に同行することに…。少しずつ変化していく兄弟の関係を、カメラは丁寧に映し出していく。 原題:Nocturne(韓国 2019年)(BSの公式サイトから引用)」


お兄さんはヴァイオリン、ピアノ、クラリネットを演奏し、母親も自分の時間や経済的な部分をかなりお兄さんに使っている。弟さんもピアノをやっていて、音大を受験するも失敗。もし母親が兄にさいている時間や経済的な部分を自分に向けてくれていたら…そんな環境に苛立ちを覚えながら、少しずつ成長していくお話。

お父さんが何らかの事情でいなくて、お母さんがつきっきりでお兄さんのお世話をしているんですよね。

もういい年齢になったのお兄さんの髭をそったり、頭を洗ったり。明らかにお母さんが過保護でお兄さんの自立を阻害しているような印象…。


日本の場合、定期健診などで発達障害の疑いがあれば『療育』に通い、専門家のアドバイスを元に本人も家族も工夫しながら(発達障害は治るものではないので、工夫やまわりの理解が必要)社会で生きていくためにいろいろと試行錯誤していきます。もちろん自治体によって、その待遇にはかなり差があります(グレーゾーンの方の発見が見落とされたり、明らかに発達障害であっても保健師からのアクションが遅かったり)。

韓国のこういった場合の社会の仕組みを知らないのでよくわからないのですが、なんせお母さんが大変。

そして大変なお母さんはお兄さんにつきっきりなので適度な距離感が保てなくなっている…。


発言も常にお兄さん寄り。

「兄には才能がある。人の心を動かす音を出せる。でも弟の音楽にはそれが感じられない」

「兄は話す人が弟しかいないんだから、相手をしてあげて」

「(弟さんに対して)私達が生きていくために働いて」

などなど。


こんな言葉を投げかけられて、どれだけ弟さんは傷ついたでしょうか。もちろんお母さんもいっぱいいっぱいだから、見ていてよけいにツラい。

自治体じゃなくても親戚などお母さんを手助けしてくれる人がいればここまでの思いをお母さんも弟さんもしなくてもよかったのに…と感じました。


そんな環境で育ち、弟さんは自分の置かれている境遇に苛立ちを感じ始め、ついには家を出ていくことに。


月日が流れ、お母さんの体調が思わしくない中、お兄さんがロシアに演奏旅行に行くことになります。それにお母さんではなく弟さんが同行することに。


家を出て家族と距離を置けるようになり、弟さんも年齢を重ねたせいか、すごく落ち着いていて、お兄さんの突飛な行動も優しく諭して見守る姿が。


そして今まで母親がやっていた髭そりも、お兄さん本人にさせようとしてました。

私が一番感動したのはこのシーン。弟さんが「それぐらい自分でできるでしょ。自分でやってごらんよ」と。

弟さんがお兄さんの自立を促していて、素晴らしかった。

本来ならピアノもクラリネットも演奏できて、器用なんだし、今どきのひげ剃りは安全に設計されてるし、何なら電気シェーバーを使ってもいいじゃない(もしかしたらお兄さんは聴覚過敏でひげそりの音が苦手かもしれない)。


生まれてはじめて自分自身で髭を剃るお兄さんを温かく見守る弟さんが本当に素敵でした。もちろんお兄さんは自分で髭を剃ることができていましたよ。


そして演奏会でお兄さんがクラリネットを吹いて、弟さんがピアノを演奏するというシーンがあり、

「兄が音楽で引っ張ってくれたのが本当に頼もしかった」という弟さんの言葉。


若い頃から密着撮影していて、それこそ若くて自暴自棄になっている弟さんが時間を経て、本当に素敵な大人になって、お兄さんの発達障害云々より、弟さんの対応の変化が本当に素晴らしかった。

発達障害は脳の個性であり、治るものではないので、まわりがどう接するかによって本人や家族の生活も変わってきます。それを考えさせてくれた素晴らしいドキュメンタリーでした。

脳の個性なので、発達障害と言う名称もそのうち変わればいいなぁ。

先日、放送していたアルゲリッチの映画もまだ見てないので、見るものがいっぱいだわ…。


発達障害の子供に創意工夫をしながらピアノを教える中嶋 恵美子先生の本。発達障害関係なく、子供にどうやって音楽を教えるか、いろんな工夫が書いてあって勉強になります。

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