2020年3月31日放送「玉木宏 音楽サスペンス紀行~亡命オーケストラの謎~」

見ました。やっと見ました。3年前の番組で再放送でしたが。番組の感想だけ書こうと思いましたが、当時の時代背景など、いろいろ書いたのでちょっと今日は長いです。すみません。

この番組は日本人指揮者、近衛秀麿さんに焦点を当て、第2次世界大戦中に当時の日本首相(近衛文麿さん)の弟という地位を活かし、たくさんのユダヤ人や音楽家を救ったというお話。近衛家と言えば公家の五摂家のひとつ。家名は平安京の近衛大路に由来します。2018年の大河ドラマ『西郷どん』にも少し登場していましたね。


日独同盟を結び、近衛秀麿さんが音楽大使としてドイツに渡り、日本人初のベルリンフィルハーモニーの指揮者をつとめ、その後もドイツの各地方の名だたるオケと共演。


ところが自身の音楽がナチスのプロパガンダに利用されることに疑問を持ちはじめ、そういったコンサートの指揮を断るようになると、ドイツから不遇な待遇を受け、ドイツ国内で指揮をすることはなくなります。

その後ポーランドに渡り、フランスに渡り、当時は珍しい私設オケを立ち上げ、地下組織を通じて、いろんな音楽家やユダヤ人を救ったというエピソード。


見ていて驚いたのは「低俗なポーランド人は、ドイツの高尚なクラシック音楽を奏でることを禁じる」という命令が下され、当時のポーランド人音楽家は歌謡曲的なものしか演奏されることが許されなかったこと。もちろんポーランドを代表するショパンの曲も禁じられていたそうです。なんという考え…意味がわからん…でもそれがまかり通るのが戦争や思想の怖さ。

それでも秘密コンサートで禁じられたクラシック演奏会を行ったり(見つかれば、もちろん収容所送りや射殺をされる覚悟で)していました。

エピソードの中に『戦場のピアニスト』のモデルにもなったユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンのお話も出てきて、シュピルマンの仲間たちが秘密コンサートで得た収入をシュピルマンに渡したりしていたそうです。

そんな中、ポーランドの何箇所かで秀麿さんが指揮をするコンサートが行われることになります。もちろん当時の劇場はすでにドイツ人専用で、お客さんもナチスの関係者などドイツ人のみ。オケのメンバーもドイツ人なのですが、唯一ワルシャワで行われたコンサートのみ、メンバーがポーランド人で編成されていました。

そこで演奏されたのはシューベルトの交響曲『未完成』。

当時のワルシャワの街は8割以上が瓦礫となり、その中で禁じられた音楽を奏でるワルシャワフィル。そんな状況を思い、ずっと演奏できなかったクラシック音楽を奏でることができ、演奏中にメンバーの中には泣きはらしたりしながら演奏する人もいたそうです。当時の状況の中で、秀麿さんにも相当な覚悟や考えがあったんだろうと思います。

番組では当時の秀麿さんの編曲で、地元の有志の音楽家の方が『未完成』を奏でるのですが、その場面がまた大感動。演奏中に背景に映し出される当時の写真がまた何とも悲しすぎる…。


他には秀麿さんのお孫さんにあたるチェリストの水谷川優子さんが少し登場したり、フルニエの話も出てきたり、めちゃくちゃ見ごたえがありました。

国境付近の案内人は自身が収容所行きや射殺されるのを恐れたため、誰を何人逃したなどの記録が一切残っておらず、おそらくフランスのこのあたりの地域からスイスの国境へ逃したんじゃないかという推測もされていました。


スイスといえば、社会で習いました『永世中立国』。


私のスイスの知識としては、

・アルムのもみの木
・とろけすぎるチーズ
・でかい犬

↑すべてアルプスの少女ハイジからのイメージ

他には
・高級時計
・精密機器
・ロジャー・フェデラー(テニス界のファンタジスタ!)
・スタン・ワウリンカ(テニス界の熊さん)
・マルチナ・ヒンギス(16歳で全豪テニスを優勝したときの衝撃と言ったら!)
・ステファン・ランビエール(超イケメンのフィギュアスケート選手)
・サラ・マイアー(超美人のフィギュアスケート選手)

というめちゃくちゃ偏ったもの。


この番組を見て、激動の時代にどうして中立を守り抜けたのか気になったので調べてみると、

今のスイスは永世中立国なのですが、15世紀から18世紀にかけてはヨーロッパ各国の様々な戦争にスイス人兵士を傭兵として送り込んだヨーロッパ最大の傭兵国家。その数は100万人を超えます。スイスが攻撃された場合はスイス軍が外国から呼び戻されることになっていたため、スイス傭兵を雇う戦争当事国はスイスを攻撃しようとは思いませんでした。こうしてすべての国に等しく傭兵を派遣することが、逆説的にスイスが永世中立国へと踏み出すための第一歩となったのです。

スイス人の傭兵はとても優秀で、真面目で規律を守り、たとえ敵方に同じスイス人の傭兵がいても命令を忠実に守り、戦地によっては兄弟で闘うこともあったそうです。

永世中立国になるキッカケは1515年にマリニャーノの戦い。この戦いで敗れ、多くの戦死者を出したスイスは、領土拡大政策の果ては国の滅亡だと悟ります。それからというもの、スイスは状況に応じて中立の立場を取るように。この政策はスイスの伝統として定着し、スイスは1674年に中立を宣言。1814~15年のウィーン会議で永世中立国に承認されました。


そして第2次世界大戦時、

スイスはドイツが侵略してきた場合は、徹底的に戦うことを明らかにしていました。平坦なオランダやベルギーと比べるとスイスは狭小ですが山岳地帯にあり、ゲリラ戦を継続することは可能だったのでしょう。強力なドイツ軍も気楽には手を出すことは出来なかったのです。

侵略をあきらめてしまえば、スイスはドイツにとって価値のある存在でした。スイスは現在にいたる国際銀行決済システムBISの本部のある場所です。ナチスドイツの金はスイスを窓口として貿易決済に使われ、ドイツの戦争継続を助けました。

さらに、スイスはナチスの財産を秘匿することにも役立ちました。スイスの銀行の秘密主義は戦後もナチスの戦争犯罪者たちの財産を守ったのです。ただし、スイスはユダヤ人の財産の秘密も守りました。執拗なドイツの要求にもかかわらず、ユダヤ人の財産はドイツに手渡されることはありませんでした。

スイスはユダヤ人の難民を何万人も受け入れましたし(ただし、それ以上に多数のユダヤ難民の受入を拒否もしました)、1,700人におよぶ撃墜されたアメリカ人パイロットも助けました。中立は看板だけではなかったと言えるでしょう。けれでも、ドイツの侵略を避けるために行ったスイスのナチスドイツへの協力は、名誉と言えるようなものではありませんでした。ナチスの金とスイスの関係は、戦後繰り返し非難されることになります。

それでも、スイスはドイツ空軍が領空を飛ぶことを武力を行使してまで、許しませんでした。経済的な協力はしても、軍事的な協力は拒否し続けたのです。強大なナチスドイツの軍事力や、残酷な占領政策を考えれば、それは勇気のある判断と言って良いでしょう。小さな国の中立主義は国民の強い意志で貫かれたのです。引用元はこちら↓

ヒットラーはなぜスイスを侵略しなかったか(引用元:ビジネスのための雑学知ったかぶり)



今もスイスは成人男性に兵役義務を課す、欧州では数少ない国の1つで、スイスの男性は全員、170日間の基礎訓練を受けることになっています。訓練を終えたあとも、ライフルは家に置いておくことになっていて、有事の際には72時間以内に20万人以上の予備役兵士を動員できる体制が整えられているとのこと。


ちなみに第三次世界大戦が起きたときに一番安全な場所が「スイス」と言われています。

また、橋や道路、トンネルなどのインフラ設備は、侵略者に活用されないように遠隔で破壊できるように作られています。その数は実に3000カ所以上。

曲がりくねった山道は、爆破によって地滑りを起こし通行不可能にするとのこと。

アルプスには2万6000カ所以上の掩体壕や要塞化された陣地が設けられていて、対戦車砲や対空砲などが備え付けられています。

こうした施設がアルプス地方全体に存在している……ということは、スイスという国自体が大きなブービートラップのようなものであり、ヨーロッパ中央の「難攻不落の城」。

ところが、いまやスイスの周囲の国々はいずれもEU加盟国となり、スイスを侵略してくることはまずないと考えられます。

そのため、スイスでは頑なだった方針を転換し、「国家要塞」として設置した壕や陣地を博物館化したり、2020年までに動員可能兵士数を20万人から8万人に減らすことを決めています。

全人口を収容可能な核シェルターを保有している国はスイスだけ。その収容能力は、実に人口の114%に相当します。

1978年以降の建物は「12メガトン級の核爆発が700mで起きても耐えられるシェルターを作ること」と定められています。

2006年時点でのシェルターの数は、普通の家の大きさから2000人が4ヶ月以上籠もれる地下鉄のトンネルまで、860万人分にも上ります。

そのため、もし世界規模の核戦争が起きたとしたら、生き残るのはゴキブリとスイス国民なのではないか、と言われています。引用元はこちら↓

第三次世界大戦が起きたときに一番安全な場所が「スイス」になるのはなぜか?(引用元:GIGAZINE)


そうなのか…スイスすごいな…。また一つ勉強になりましたよ。

高校生の時に世界史を選択していましたが、近代~現代って時間が無くなるせいかサラサラーっと流すだけなんですよね。

世界史の先生が古代大好きで、やったらそこに時間を割いていた記憶が。


海の民と言えば『フェニキア人』

世界最初と言われる船や車輪つき戦車を発明したのは『シュメール人』

『アッピア街道』もいまだに頭から離れない…。やめてよやめて、テスト以外でその知識を使ったことないわ…。


あとこの番組、何と言っても最高だったのは、

『のだめカンタービレ』の千秋役で我々の世代を虜にし、

『あさが来た』の旦那さん役で私の母世代を虜にしたナビゲーター役の玉木宏さんがかっこよすぎて!


玉木さん、抜群に声がいいんですよね!

わが子にもチェロのC線でこんな素敵な響く低音をいつか出してほしい!


ヨーロッパの街並みを玉木さんが歩くのですが、全然負けてない。いや、むしろ圧勝してました。(←何と勝負してるのかよくわからんけど)

玉木さんが街中を歩く映像をみるたびに「この男性はジャパニーズアクターですよ!めちゃくちゃかっこいいでしょ!」と声を大にして言いたい自分がいました。


以前、たまたま言った観光地の旧家でドラマのロケをしていて、ガラッと扉を開けたら目の前に某有名若手俳優さんがいらして、まったく予想してなかった&実物のあまりのかっこよさに腰が抜けそうになった自分ですが、玉木宏さんが目の前に現れたら、過呼吸を起こした後に魂が抜けると思います。なんならそのまま成仏してしまうかもしれない。


こういうのどんどん再放送してほしいです。

↓以前、読んだことがあります。秀麿さんのことが細かに記述されているノンフィクション。めちゃくちゃ面白いです。

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