2020年1月2日放送 “わたし”という名の楽器その4(第88回日本音楽コンクール・ドキュメンタリー)

昨日からの続きです。

本選を間近に控えプロのオーケストラとのリハーサルです。持ち時間は1人35分。わずかな時間でオーケストラと歌う感覚をつかまなければなりません。

3度目の挑戦で本選の切符をつかんだ歌い手がいます。テノールの小堀勇介さん、33歳。新進気鋭のロッシーニ歌いとして知られる小堀さん。プロの歌劇団の公演で主役を歌うなど順調にキャリアを築いています。

小堀さん
「日本音楽コンクールは金字塔と言いますか、このタイトルを取れるか取れないかというのは大きなその後の分かれ道。歌い手として自立していくキャリアをこれから築いていかなきゃいけないわけですけど、そのキャリアのためにすごく重要な1個だと思うんですよね。」

本選でも得意とするロッシーニのアリアで勝負します。今ではレパートリーの中心になっているロッシーニのオペラですが、取り組み始めたのは6年ほど前のこと。

小堀さん
「それまではずっとフランスのオペラだったり、もうちょい重たい前期のヴェルディの、ドニゼッティをやっていたんですけど声帯を壊すことが多くて。もしかしたら自分に合ってないのかもしれないなと思って。」

故障続きでレパートリーの選定に悩んでいた小堀さん。新国立劇場の研修所でオペラ人生を変える出会いがありました。

テノール歌手のセルジョ・ベルトッキさんとの出会いです。

小堀さん
「“お前の声はロッシーニのブッファ(身近な題材を扱った喜劇的なオペラ)を歌うべき声だ”って。だからもうこの3年間かけてロッシーニを勉強しようと。“テクニックは僕が教えるから”っておっしゃっていただけて、その言葉がスッと自分の中に入ってきたんですよね。」

力強い歌声が必要とされ、喉に負担の大きいヴェルディに対してロッシーニで求められるのは軽やかで美しい声。自分の声と向き合った小堀さんはそれまでのレパートリーを捨てて歌うべき作品を慎重に見極めてきました。

小堀さん
「個々の持ってる声帯は唯一無二なんで、自分の声に合ってなくても、自分がこの音楽を好きだからこの作品を歌ってももちろん上達するとは思うんですよ。ただやはり声帯に負担はかかってしまうんですよね。楽器が違うので。声を健康に保ってオペラの魅力を最大限に伝えるためには、自分の声に合ったレパートリーと出会うこと。それもなるべく早く出会うことが歌手人生を長く正しく続けていくための秘訣と僕は持ってますね。」

声楽家を志したのは高校3年生の時、国立音楽大学に進みプロのオペラ公演を見て進むべき道を決めました。

小堀さん
「何と言いますか、一個腹にくくった槍を持って一本の槍で戦い抜く姿に惚れ込んだと言いますか。衣装を身につけてたとしても使うのは自分の声だけですからね。」

小堀さん
「舞台は遠ければ遠いほど何も見えないですから。身振り手振りは分かりますけど、顔の表情は双眼鏡を使わなきゃ分かんないんで。その中でもやはりキャラクターの生き様とか決意とか何に感動して何に悲しむのかを表現するのは、その歌声一つなんですよね。それってすごいことだと思うんですよね。人間のできる芸術活動の最もライブで生き生きしたもので、かつものすごく感動的なもの。僕はそこにすごく共感をしてすごく感動して。やっぱりそういうものに触れると自然と涙が流れてくるので、これ仕事にできたらすごいなっていう風に思いましたね。」


小堀さんの歌声は軽やかで伸びがあって、ステージングも素晴らしくて、素人の私ですら惹き込まれるものがありました。

現役のトッププロということもあり、存在やしぐさが華やかで。もちろんヘアスタイルやファッションもとてもオシャレ。コンクールのリハーサルとは思えないぐらいのとても楽しい雰囲気でした。

明日に続きます。

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