2020年1月2日放送 “わたし”という名の楽器その2(第88回日本音楽コンクール・ドキュメンタリー)

昨日からの続きです。

声楽部門、第2予選。出場者の多くがプロの声楽家というハイレベルな争いとなりました。

声楽部門には課題曲がありません。自分の声に合った曲を選べるかも審査のポイントです。

工業高校出身の吉田さん。選んだのは張りのある歌声を求められるプッチーニのアリア。

ベリーニのアリアでソプラノらしい華やかな声を響かせた26歳の小川栞奈(かんな)さん。2019年3月に東京芸術大学の大学院を修了し満を持して挑戦しました。

小川さん
「学生の時は受けられたもんじゃないなと。あまりのレベルの高さに。これからも何回も挑戦していつか取れるようにという気持ちで今年から挑戦させていただくことになりました。」

プロのオペラ歌手として活動するメゾソプラノの丹呉由利子さん(35歳)は年齢制限35歳最後の挑戦です。

丹呉さん
「このコンクールは他のコンクールとちょっと格が全然違うので。デビューしてるのに今更コンクール別に受けなくてもいいんじゃない?というのはあったんですけど、私はコンクールで賞はもちろん大事ですけれど、成長する過程でうまく使っていきたいなとコンクールをとらえているので。そういう意味ではコンクールというよりは狙って歌ったつもりで、それはどうでるかな?と思います。」

それぞれの思いを歌に託した第2予選結果は?

ソプラノの小川さんは初出場で本戦進出を果たしました。

小川さん
「すごいびっくりしたんですけど、皆様の分も頑張りたいと思います。ありがとうございます。」

吉田さん、奥秋さんも見事予選通過。6人中3人が20代の若い歌い手となりました。プロのオーケストラと共演する本選は1ヶ月後です。

10月、スタジオには不思議な光景が広がっていました ティッシュをつまんで丸めたり柄杓で水をすくったり。実はこれ日本音楽コンクール作曲部門の入賞作品。今回は47の応募作品の中から3作品が選ばれました。この日はラジオ放送に向けたリハーサルです。1位を獲得した松本真結子さん(24歳)。自分が聴きたい音を集めて一つの音楽作品に仕立て上げました。

(打楽器奏者がティッシュをクシャクシャにする)

指揮者
「あれなんか聞こえない?あれもっと聞こえない?観客が何やってるんだと思う。本番じゃないからいいけど。」

松本さん
「どうでしょう?でも限界ですよね?」

打楽器の人
「もう限界です。」

松本さん
「もうちょっと固めの持ってきてるんですけど。もうちょっとガサガサした紙。」

どうして紙をクシャクシャにした音で作曲したのか。

松本さん
「ちょうど書いてる時が春で花粉がいっぱい飛んでる時で、ティッシュをすごい使ってたんですよ。たくさんティッシュを使ってたらこれも使えるないみたいな。」

題名は『風の形象 8人の奏者のための』

編成はバイオリン2、ビオラ、チェロ、コントラバス、マリンバ、打楽器、ピアノ。

松本さん
「現代音楽だととっつきにくいと感じる人が多い。その壁を越えて誰でも聞ける開かれたものとして可能性が十分にあると思うのでと今後ともやっていきたいなと思ってます。」

毎年、日本音楽コンクールはドキュメンタリーが放送されるのですが、今年は声楽を中心にピックアップ。それに加えて作曲部門も少し取り上げられていました。

今年からはオーケストラの生演奏で演奏しての審査ではなく、事前に選ばれた曲をラジオ用に録音するスタイル。

“若い作曲家の希望の芽を摘むんじゃないか”という指摘もあったようですが、毎年作曲部門は新人作曲家の曲にプロオケの方が演奏して、演奏してみたらオケの方が“これはどうやるの?ここがおかしいよ”みたいな変な空気のリハが多いんですよね。

作曲家の方も生オケで曲を披露するのはほぼ初体験の方が多いので、プロオケの方にいろいろ指示されて、萎縮してるイメージです。

来年は作曲部門はどうなるのか、それも楽しみです。

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