2020年1月2日放送 “わたし”という名の楽器その5(第88回日本音楽コンクール・ドキュメンタリー)

昨日からの続きです。今日が最終回。

本選出場者の中で最年長の小林啓倫さん(34歳、バリトン)。

テノールの小堀さんとは大学の同級生。これまで何度も共演を重ねてきました。

小林さん
「歳は一つ下だけど同じ学年で、出席番号も隣同士でいつもテストで競い合ってた仲です。」

スタッフさん
「勝手知ったる仲の人と競い合う?」

小林さん
「そうですね。彼は首席で出てますし、いつもそうですね。1回ぐらい勝ったことはあるかな?という感じ。」

住まいは音楽関係者向けに作られたマンション。練習はいつもこちらの防音室で使えるのは朝9時から夜11時までです。

小林さんは発声練習をせずに曲を歌い始めます。

小林さん
「僕は曲の中で発声練習をやりたいっていうのがあって。曲を歌いながら曲に合った体にしていく。」

喉を酷使する声楽。1日で歌える時間も限られています。効率よく練習を行うために曲を歌いながら喉を温めていくのは小林さんのやり方です。

本選で歌う名前をカバー黒のオペラ道化師の冒頭を飾るアリア。旅回りの役者たちの悲哀を歌いながら、オペラの中で巻き起こる愛憎劇を暗示するバリトンの真骨頂です。

小林さん
「出てきた道化師が皆さんと同じようにこの世の中で同じように同じ空気を吸ってる人間なんだって言う。肉もあるし骨もあるしって歌ってるところが同じ舞台に出る人間として共感できると言うか。」

プロの歌劇団に所属し、2017年にオペラデビューを果たした小林さん。夢は主役を張ることですが、今は音楽大学の職員や結婚式で歌う仕事を生計の足しにする忙しい日々を送っています。

小林さん
「子供が生まれてからは夜も起きたりするのでどうやって体を休めるかが一番難しいですね。オペラの主役はやっぱり一人だし、バリトンの主役って言うとそんなにたくさんのオペラもないですし、上演回数も少ないのでそこを狙っていくとやっぱり狭き門なので。子供が子供が物心ついたときに自慢のお父さんと言われるように、このコンクールでは良い結果を残して次につなげていけたらと思ってます。」

声楽部門本選会当日。

開演10分前、華やかな衣装に身を包んだ小川栞奈(かんな)さんが舞台袖に向かいます。15歳の時に故郷の栃木県を離れ、東京の音楽高校に進学。以来オペラ一筋で歩んできました。今は聖歌隊などのアルバイトをしながらオペラ歌手になる日を夢見ています。

小川さん
「母にも喋る前に歌っていたと言われるぐらいなので歌は人生のパートナーです。たとえ自分の声が出なくなったとしても音楽やオペラの側にはずっといるんだろうな。」

スタッフさん
「保証もない世界は怖くないですか?」

小川さん
「怖いですね。怖いですけど自分を信じて まず勉強していかないとどうしてもブレちゃうと言いますか。生きていけるのか不安だなと思って布団で泣くこともありますし。でも泣いて次の日また今日も頑張ろうと思うから良いんですよね。その気持ちが灯火が消えないように自分を保ちつつやっていきたいです。」

そしてファイナリスト6人の演奏が流れます。出番を終えて次の人が待つ舞台袖の様子も映し出されます。

そして結果は、

1位に輝いたのは小堀さん。

小堀さん
「聞いてくださるお客様は僕の声を聞いて帰り際に笑顔になってもらえるようなそういった明るい元気の出る声を目指して、演奏を目指してこれからも精進していきたいと思います。ありがとうございました。」

第2位と聴衆賞を獲得したのは小川さん。

小川さん
「とっても嬉しいです。特に聴衆賞は本当に。出番が1番目にだったにも関わらず聴衆賞というのは皆さんの記憶に残ったのかなと思って、すごい嬉しかったです。ありがとうございます。」

第3位は吉田さん。

吉田さん
「今回の音源を聞いて、できてない部分もまたこれから改めて勉強していきたいなと思いますね。」

奥秋さんは入選です。

奥秋さん
「もっとできることを探して、もっと成長できる自分もいると思うので頑張って生きなきゃなと思います。まだまだの自分なのでもっと勉強してから、スターダムに乗れるように僕はコツコツ努力をするだけかなと思います。」

これで放送は終了。

印象的だったのは、次の出番の人は舞台袖で演奏後の帰ってきた相手を褒めて称えるんですよね。その光景かなんとも素晴らしい。体操も演技を終えると国やチーム関係なく称えるのを見ると、本当に優しい気持ちになります。

あとお客様も本当に温かくてブラボー!の連続。器楽と違って声楽のブラボー!は音の響きが鳴り止む前に言うのも面白かったです。あの雰囲気が何よりも声楽の素晴らしさだと思います。

来年、声楽部門を見に行きたくなりました。ブラボー!言いたい。

素晴らしいドキュメンタリーでした。

こちらもよろしくお願いします↓

にほんブログ村 クラシックブログ チェロへ
にほんブログ村