2020年1月2日放送 “わたし”という名の楽器その1(第88回日本音楽コンクール・ドキュメンタリー)

2019年に放送されていたものを新年に再放送。声楽は他の楽器と違って遅くはじめる方が多いのでコンクールを受けるまでの人生が様々です。そしてやっぱりドキュメンタリーはNHKに限ります。あとはテレ東。めちゃくちゃ面白かったので、それではいきますよ。

日本音楽コンクール。プロの音楽家を夢見る若者たちが人生をかけて挑む大舞台です。

2019年に行われた第88回はフルート、オーボエ、ピアノ、バイオリン。それぞれの楽器を手に競い合う中でひときわ特別な部門があります。それは声楽。

自らの体を震わせ響き渡る歌声。自分の声を信じ、オペラに人生を捧げる者たち。血と肉で出来た唯一無二の楽器が奏でる美しい旋律。コンクールに挑む若き声楽家たちの物語です。

2019年9月。声楽部門の予選が始まります。今回はオペラに登場するアリアで歌声を競い合います。応募総数116人。第1予選は二日間に渡って行われました。2度の予選を経て本選に進めるのは例年6名程度です。

審査のポイントとなるのは声の質、声量、音程や節回しなどの基礎的な技術。さらにオペラの中で演じてる役をどこまで理解しているか豊かな表現力も求められます。

高い声から低い声まであらゆる音域の歌い手が一堂に会するのも声楽部門ならでは。

出場者の中で最も多いソプラノは物語のヒロインを演じるオペラの花形です。華やかな声を競い合いました。

ソプラノよりも低い音域を歌うメゾソプラノは深みのある声で個性的なキャラクターを演じることが多いパート。

男性で高い音域を歌うテノールはソプラノと共に物語の中心を演じます。

テノールよりも低い音域を歌うバリトンは渋みが持ち味。

そして最も低い音域を担うバス。重厚な低音を披露した奥秋さんは26歳です。

奥秋さん
「声変わりした時に声が低すぎて歌が嫌いだったんですけど、こういう声が必要となる世界。僕はもともと引っ込み思案というかちっぽけな人間なんですけど、歌の中だったらいろんな側面を表現として出せるので。挑戦もできるのが歌のいいところだなと思ってます。」

声楽部門は年齢制限が35歳までと他の部門に比べ高いのも特徴。声は成熟するのに時間がかかると言われているのです。

愛知県から参加した本田信明さん(30歳・テノール)の本業は耳鼻科の医師。

本田さん
「元々歌は高校生ぐらいからやっていたので。歌の魅力というか音楽の魅力にすごい取り付かれてしまったのもあるので。仕事しながらなんですけど、できる範囲で歌の勉強も続けてます。」

竹下裕美さん(33歳・ソプラノ)。竹下さんは歌手と会社員の二足のわらじで挑戦しました。

竹下さん
「歌の会社にいるので、ポップスも少し歌いながら両立をしている状態で、なおかつ事務作業もするので何足もわらじを履いてコンクールを受けているので。」

第1予選通過は24名。

初挑戦で第2予選に駒を進めたのはテノールの吉田一貴さん25歳。2018年3月に東京音楽大学の大学院を修了。まだ歌の仕事だけでは食べていけません。

引越し業のアルバイトで生活費を稼ぎながらコンクールに挑戦する日々を送っています。アルバイトがある日は朝から夕方まで1日がかり。いかに練習時間を確保するかが目下の課題です。

この日は大学の練習室を借りてコンクールのための個人練習。喉を温めるための発声練習は1時間以上かけて行います。

吉田さん
「アルバイトの翌日は特に念入りに。やっぱりなまっちゃうんで1日休んでしまったら。声楽も体を使って声を出しているので肉体労働のアルバイトをしているとその後は歌えないんですよね、体が疲れすぎちゃって。」

発声練習を終えたところで意外な告白が。

吉田さん
「僕は…これ言っていいのかな?ピアノが弾けないので。音大でてるのにピアノが弾けないんですよ全く。というのも僕はもともと工業高校で高校でたら就職しようと思ってたんです。」

出身は広島県の呉市。地元の工場で働くつもりで工業高校に進学します。所属していた吹奏楽部で顧問の先生が吉田さんの声に注目。

吉田さん
「そこで“君いい声だから声楽をやらないか?”っていうのが始めで。お遊び程度で最初やってたんです。」

軽い気持ちで合唱に取り組んでいた吉田さん。音楽大学に進むきっかけとなったのは先生の一言でした。

吉田さん
「顧問の先生が“人生、同じとこの工場で働くより、ちょっと一度チャレンジしてみたら?”っていうのを言われて。じゃあやってみようかなっていう気持ちになって、やり始めましたね。」

スタッフ
「それまではオペラに触れてなかったんですか?」

吉田さん
「そうですね。全然です。歌の譜読みはパヴァロッティを YouTube で聞いて。それを楽譜を見ながら聞いて耳コピっていうのをしてましたね。耳コピで入試に挑みましたね。」

吉田さん
「高校の時、必死に勉強して国家資格もとって。電気工事士とか旋盤でご存知です?鉄削ってやるやつ。ああいうのも資格は取ったんですけど無駄になりましたね。ハハハ!」

取り上げた方達は全員第一予選通過。
声楽はここに至るまでの過程が本当に面白いですよね。そして皆さん歌が大好きななのが画面からも伝わってきます。人前で歌うからなのか皆さんスタイリッシュだし、肌もツヤツヤ。素敵です。

明日に続きます。

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