2019年4月30日放送。私は左手のピアニスト(2) 第1回 左手のピアノ国際コンクール『左手の音楽を本当に心から必要とする人たちを応援していきたい。智内威雄さん』

昨日からの続きです。

第一次世界大戦に腕を負傷したピアニストのために多く作られた左手のための曲。

そうした楽曲を世界中で探し出し、今回のコンクールを立ち上げたのが左手のピアニスト智内威雄(ちない たけお)さん。42歳です。

学校での智内さんの講義が映し出されます。

智内さん
「例えばラヴェルの左手の協奏曲なんだけど、たまに両手の人がこうやって弾いちゃう人がいるんです(鍵盤を押しつぶすようなタッチ)。これをやるとピアノは鳴らないんですよ。ちゃんと飛ばしてあげないと(跳ねるようなタッチ)。後の音が伸びてこない。だからボリュームを出したい時は、わざと飛ばしてあげること。」

そしてインタビュー映像に。

智内さん
「今回、左手のコンクールを立ち上げた目的は、やっぱり左手で演奏する人たちを応援することです。これが全てだと思うんです。あとは左手で演奏する者同士が励まし合ったり、刺激しあったり。そこをメインに置いているので。もちろん順位はつくんですけれども、それは全てではなくて。音楽を必要とする、もしくは左手の音楽を本当に心から必要とする人たちを応援していきたい。」

知内さんはドイツ留学中の22歳の時、ジストニアと診断され、恩師から勧められた左手の曲に魅せられました。

何かを失うことが逆に演奏に深みを与えて、人々の胸を打つ。その不思議な力を今、噛み締めています。

智内さん
「右手を失った人達っていうのが作り上げた分野で、すごい強い希望で曲を依頼したり、書いたりしてるんですよ。その中に音楽の希望みたいな、音楽の力みたいなものが凝縮されてる。それが一番最初にスクリャービンが弾いた時に感じましたし、感動しました。それは今でも変わらないんです。」

左手での演奏は、音の響きの豊かさに特徴があります。ピアノは鍵盤を叩くと弦を押さえていたダンパーが上がり、ハンマーが弦を打って振動します。

智内さん
「両手で演奏する時というのは、同時に使える指の本数が多いので、ペダルを使わずにそのまま弾きます。」

ペダルを踏まないと押した鍵盤のダンパーだけが上がり、その弦のみが振動します。

智内さん
「片手で弾く時っていうのは、同時に全部抑えられないので、ペダルを踏んだまま2回に分けてひきます。」

全てのダンパーが上がり、弦と弦が共鳴します。2回に分けて弾いた音の響きをペダルで重ねることで、ハーモニーが生まれます。

智内さん
「純粋に耳でコントロールするんですけれど。ペダルを踏み込んだ状態で、その音の大きさをしっかり聞いて、その音がどれぐらいになっているのかを常にチェックしておかなきゃいけない。響き始めたなと思ったら少しペダルを踏む。踏み過ぎると逆に濁りやすくなるので。そこは弦に触れるか触れないかぐらいのところまでペダルを戻したり。少しコントロールすることが必要です。」

音の響きはペダルの踏み加減一つ。響きの美しさの秘密は足元です。

智内さん
「響きっていうのは、まあピアノの声みたいなもんですね。自分がどういう風に弾きたいかっていうのは大切だけど、ピアノがどう響きたいかっていうのをよく聞いてあげて、お互いの共同作業としてやらなきゃいけないんです。これは両手よりも、もっとシビアに必要な能力と言うか、技術だと思います。」

今日はここまで。
左手のピアノコンクールを立ち上げた智内さん。これまで埋もれていた左手の曲も復刻と普及を目指しています。誰もがやらなかったことをはじめるのってすごく大変なことですが、とても大事なことです。
智内さんがやらなきゃ、左手の名曲は埋もれてしまうところだったかもしれません。

それではまた明日。

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