2019年4月28日放送。ショパン・時空の旅人たち6 (2018年ショパン国際ピリオド楽器コンクール)『ニ次審査開始。川口成彦さんの本番前に鍵盤が壊れるアクシデント』

大会四日目。二次審査に向けたリハーサルが行われます。

川口さんは予定時間の30分以上前に会場入り。前の出場者のリハーサル中なのに待ちきれずホールに入ってしまった。前の番の人「すみません。一人にさせてください」

そう言われて、川口さん退出。

「彼ね、うまいんですよ。ポテンシャルが高い。ロン・ティボー国際コンクールの入賞者。モダンピアノの人だけど、ちょっと聞いただけで上手いのがわかる。すごい人たちがいっぱいいるな。はぁ~。」

思わずため息を漏らした川口さん。
川口さんはニ次審査でも、許される上限の3台のピアノ選びました。ニ次審査に残った15名のうち、その選択をしたのは川口さんただ一人。

ショパンが最も愛したプレイエル、素朴な音色のブロードウッド、そして力強いエラール。それぞれの魅力を最大限に活かしたいところ。そして練習を終えた川口さん。

「面白いぐらいに音が伸びる、変わるタッチ。だから本当に会場の奥まで響くフォルテッシモを出すのは難しい。自分にそれができているのか、心配になってきたんですけど。」

川口さんの次の練習は優勝候補の一人、クリントンさん。

フォルテピアノの経験は、数える程度のクリントンさん。モダンピアノとはタッチも違うため、不自由さは否めない。

「ピアノに慣れるまで時間がかかるわ。ああ背中が痛い。いつも勉強している。それに身体全体の使い方を学んでいる。どうやったら、このピアノから良い音を出せるのかを学んでいる。」

幼い頃からひのき舞台で活躍してきたクリントンさん。1989年ウクライナ生まれ。8歳で世界的なピアニストのウラジミール・クライネフに才能を見出され、超名門モスクワ音楽院に入学。数々のオーケストラと共演し、完全なエリート街道を歩んできました。

そんな華々しい人生に影を落としたのが、3年前のショパンコンクール。セミファイナルまで残ったものの、結果は11位。

「決勝進むのにあと一歩だったので、とても悲しかったです。出場者はライバルだけど、友達でもあるので、いつも色々な話をしたり。メディアにも常に注目されているけれど、イギリスに戻ってきて、その全てが一気になくなりました。何か空っぽで一人ぼっちな感じがして、とても厳しい状態でした。」

プロとして演奏活動を続けているが、それだけでは生活がままならないため、ピアノ教師の仕事に追われる日々。

「生活のため、できる限りピアノ教師の仕事を続けている。地下鉄でご飯を食べることもある。今の夢は最低限の演奏会を開いて、生活ができるお金を稼ぐこと。」


そして地元ポーランドの若き新鋭、クシシュトフさん。クシシュトフさんはクリントンさんと同じ3年前のショパンコンクールのセミファイナリスト。今年3月に行われたある演奏会をきっかけに一気にその名を広めました。

ワルシャワ時代のショパンが使った伝説のピアノ、ブッフホルツ。その復元の完成を記念した国をあげてのコンサートでクシシュトフさんがソリストに抜擢されたのです。

舞台での存在感とは裏腹に、普段のクシシュトフさんは多くを語らず肩の力の抜けた自然体そのもの。猫ちゃんと亀を飼っています。

猫ちゃんの顔がまるまるとしててかわいい。

亀に対して、クシシュトフさん
「4年飼ってるけど、人懐っこい生き物だよ。」


妻でピアニストのアグニェシュカさん。実は今回のコンクール出場は彼女が勧めました。フォルテピアノの専門ではないからと足踏みする夫に「あなたの性格に向いているわよ」と助言したそうです。

奥さん
「新しい世界に飛んでいきなさい、と言った。フォルテピアノが持つ音の質感や色彩は、感受性が豊かな人に向いていて。決して『自分が達人だ』とひけらかす人向きではないから。慣れたどんな小さなニュアンスにも敏感で、それを探求する人でなければフォルテピアノの魅力を引き出すことなどできないはず。」

クシシュトフさん
「自分が弾いて聞こえてくる音だけをよりどころにしている。楽器に身を任せるだけ。」

ワルシャワの街が19世紀の音色に包まれて一週間。ニ次審査が始まりました。審査は三日間。15名がファイナル進出の6席をかけて競います。

まだ審査の途中というのに体力を使い果たし、席を立つピアニストが。ニ次審査は一人50分の長丁場。課題曲にはソナタなどの大曲も含まれ、身も心もギリギリの状況に追い込まれていきます。中には腕をアイシングする人も。

本番を1時間後に控えた川口さん。コンクールでは全て暗譜。普段の古楽器のステージは楽譜を見て弾くことが多いため、不安に駆られています。

「はぁ~、ふぅ~。」

ずっとため息をつきっぱなしの川口さん。


川口さんの本番直前。

「すみません鍵盤を壊してしまったんですが。」

突然壊れたピアノは川口さんが弾くエラール。前の演奏者が強く鍵盤を叩いたため、表面が剥がれ落ちてしまったようです。休憩時間を延長し、応急処置が施されます。

思わぬアクシデントの中、いざ川口さんの本番です。
続きはまた明日。

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