2019年4月28日放送。ショパン・時空の旅人たち4 (2018年ショパン国際ピリオド楽器コンクール)『華やかな世界に帰れるチャンス。優勝候補の一人。ディナーラ・クリントンさん』

リサイタルのため、1日遅れでやってきた出場者がいました。
ウクライナ出身のディナーラ・クリントンさん。29歳。彼女は優勝候補の一人。

「だいたい準備はできてるわ。他の出場者に会ったら、その雰囲気に圧倒されるでしょう?でも今はリラックスしてる。だってまだ何も起こってないもの。」

クリントンさんは、3年前の第17回ショパン国際ピアノコンクールに出場。ダイナミックな演奏と高い技術で圧倒しました。しかし結果は11位。決勝進出にあと一歩及びませんでした。

「2015年に私がいた世界が恋しくなったんですよ。2020年の次の開催は、年齢制限を超えるため出場できません。今回のコンクールの告知を見たとき『私があの華やかな世界に帰れるチャンス』だと思ったんです。」

フォルテピアノは過去の演奏活動で数回弾いたことがあるのみ。5台のピアノからは演奏経験のあるエラールとプレイエルを選びました。

イギリス・ロンドンを拠点に演奏活動を続けるクリントンさん。今回のコンクールではフォルテピアノの特性を生かして これまでの自分とは別の新たな世界を見せたいと考えています。

「私自身をピアノの個性としっかり合わせなければなりません。ピアノが何を欲しがっているのかを理解すること。私が試したいのは、このセッションから叙情性を作り出し、聴衆の気を引けるのか。新しい私に興味を持ってくれるのか。ダイナミックな演奏に頼ることなく、物語を描けるのか。」

「だって音楽はただ情熱的であったり、ドラマチックなだけではないもの。私はその道具をもらったのです」

さぁ優勝候補のクリントンさん、今回のコンクールは無事に決勝まで行けるのでしょうか。



一次審査が始まる前日、川口成彦さんが「今から疑似コンクールみたいなことをやってもいいですか?」とスタッフさんに提案。

「審査員みたいな感じで見守っててください。もう部屋に入ったら舞台だと思ってパッと弾くんで。」

コンクールの出場者にはショパン音楽大学で1日3時間の練習時間がもらえます。ピアノはそれぞれが本番で選んだものに近いものが用意されています。本番と同じピアノが弾けない上に、限られた時間の中で練習をものにしなければならない。

川口さんの2時間あとに来たのはシジャさん。

シジャさんの内にある激しい感情を外から内へ出したい、観客に訴えかけたい。しかしその表情には焦りの色が。

「とても緊張している。だから他の人と長い間話をしていない。集中したいので。でも両親がうるさくて。『毎日近況を聞いてきて、何してるの?今日は?二日後は?』集中するために、全ての端末から親との連絡に使っているアプリを消しました」

『親の期待に応えなければならない』
そう思うと、演奏に力が入ってしまう。

ここまでくると親はある程度、子離れしないとですね。もうシジャさんも子供じゃないんだから。わがやは「親が口を出すのはいつまでかな?」と思いながら、成長を見守っているところです。

シジャさんは一次審査の前に、ある場所を訪れました。そこはショパンの心臓が納められた教会。ピアノを嫌いになりかけた自分の心を揺さぶったショパン。

そして2018年9月4日。いよいよ第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールが始まります。

それではまた明日。

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