2019年1月5日放送『もうひとつのショパンコンクール~ピアノ調律師たちの闘い~』(2)カワイの調律師・小宮山淳さん

昨日の続き。今度はカワイの調律師、小宮山淳さんに密着。

小宮山淳さんは、カワイが参加する多くの国際コンクールで調律を任されてきたベテランの調律師。そしてコンクールを勝ち抜くために小宮山さんはある秘策を持っているのです。

その秘策とは、会場の近くに部屋を借りて、休憩室を設けること。そこでコーヒーを入れたり、焼き鳥の缶詰やバナナなどを置いて、ピアニスト達がくつろげるような雰囲気作りをします。そしてピアニストがくつろぎながら、直接いろんな話を聞く大事な場でもあるのです。

「ピアニストの要求は、鍵盤の深さをあと0.1mm深くしてほしいとか、そういう具体的なものではなくて、こういうイメージの音が出せるようにしてほしいとか、こういうフレーズを弾くからこういう音にしてほしいとか、そういう抽象的なもの。だから抽象的なものを伝えるときに、間に人が入るとわかりにくくなる。ダイレクトが一番いいですよね。」とのこと。

わかる。
以前、なせか幼稚園の連絡がメールの一斉配信ではなくて、電話での伝言ゲーム方式だった。来た電話を自分で聞き取って、次の連絡網の人に伝える。そしてやっぱり最初と最後の人で相違が出るのだ。だって何個も連絡事項があると、忘れるし覚えられないのだ。だから「まだ夏服の季節ではないけど、半袖で登園しても構わない。でもジャケットはちゃんと着るように。長袖の場合はジャケット着なくていいからね。名札は下のシャツにつけてね。明日はお弁当だけど、子どもたちでクッキングをするからごはんだけでね。基本は白ごはんだけど、海苔ぐらいならかけて大丈夫。ふりかけはNG。でも白ごはんだけなのはどうしても苦手ってなら、ふりかけOKだから」ってのは直接言わなければ伝わりにくいのだ。(そもそもメールの一斉配信でいいじゃん!)

そして1990年ショパン国際コンクールでカワイのピアノを選んで、第5位入賞した高橋多佳子さんにもインタビュー。当時の高橋さんにとって、カワイの休憩室は大きな支えだった。
「1990年のワルシャワはあまり物資がなく、バナナなんてなくて。でもここにはお菓子があったり、日本のものがあったり、それがすごく嬉しくて。カワイルーム、カワイ休憩室ってみんなで呼んでました」

「でもまわりをふっと見ると、ヤマハを選んでる人がいたり、スタインウェイ選んでる人もいたり、カワイルームは、みんなのくつろぎスペースみたいな、精神的な支えでした」とのこと。

カワイのその心意気、もはや調律師ではなく、ピアニストカウンセラーです。学校の保健室的な。大事ですよね。雰囲気。素敵。自分なら入り浸って、やきとり缶をバクバク食べちゃう。正直、自分のピアノが選ばれなかったら「なんでコイツが遊びに来てんねん」と思ってしまいそうだけど、小宮山さんはそんな小さい心で仕事してないのだ。


自分みたいに「若鳥焼き鳥 1パック(4本入り)7,000ペリカ」なんて絶対に言わないのだ。

そして今回、カワイのピアノを選んだ有力候補の一人、ロシアの新進気鋭ピアニスト、ガリーナ・チスチャコーバさんが登場。28歳なので今回が最後の挑戦。(ショパン国際コンクールは30歳までしか出られない)重厚感の音が出るカワイのピアノの大ファンで、長年愛用しているそう。今回はチスチャコーバさんをはじめ、1次予選では11人がカワイのピアノを選びました。

2015年10月3日。コンクール本番当日。当日券を求め、朝早くから長蛇の列が。1955年から来ているおばあちゃん。
「マルタ・アルゲリッチの決勝も見たし、タン・タイ・ソンも素晴らしかったわ」ショパンコンクールの生ける辞書ですね。

そして審査員席には、そのアルゲリッチさん(1965年1位)や、1980年5位の海老彰子さんの姿が。

いよいよコンクールがはじまります。ピアニストの名前とともに、ピアノのメーカーもアナウンス。

1次予選でカワイを弾いたピアニストは、チスチャコーバさんをはじめ、5名の通過です。


そして2次予選。日本人の小野田有紗さんが登場。1次ではカワイを選んでいましたが、2次ではきらびやかで繊細で歌えるピアノにとのことでスタインウェイに変更。小野田さん、ヘアスタイルとドレスがすごく素敵でした。2次の演奏後に小宮山さんに話しかけます。「1次のほうがよい緊張感を持てて、2次ではあまりいい演奏ができなかった」と小野田さん。
そんな小野田さんの落ち込んでいる姿を見て、小宮山さんもあたたかく励まします。「ピアノの使ってのサポートはできないけど、違った形でもサポートできるから」と。

これも小宮山さんの戦略かもしれませんか、話を聞いてくれるだけでも嬉しいですよね。そんな小野田さん、2次予選で敗退。

一方、ロシアのチスチャコーバさん、元気がありません。風で発熱し、38度あるそう。モニターを見ながら、小宮山さんも落ち着かない様子。演奏後もチスチャコーバさんに笑顔はなく。小宮山さんがチスチャコーバさんさんに話しかけます。熱のためかいつもとピアノの音が違って聞こえたそう。

でも小宮山さんは「そう?でも素晴らしい演奏だったよ」とここでも励まします。大舞台のプレッシャー、なれない環境。小宮山さんはもはやピアニストの心の支えですね。そしてチスチャコーバさんは無事に2次予選通過。

そしてチスチャコーバさんは、3次予選では満足のいく演奏をしましたが、通過はできず。

小宮山さんは「志半ばで、さよならするのはつらい。けどまたどこかで会えるから。お互い頑張りましょう」とチスチャコーバさんに声をかけたそうです。

カワイのピアノを選んだ人で、本選(ファイナル)に進んだ人は0人。小宮山さんも次に向けてまた歩き出します。

ちなみに2019年4月29日(月) 午前9時00分~ BS1で再放送されます。GW真っ最中だけど、もっかい見たいわ。

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