2019年4月28日放送。ショパン・時空の旅人たち1 (2018年ショパン国際ピリオド楽器コンクール)『フォルテピアノ修復家。エドウィン・ブンクさん』

やっと見られました。
いつものように『見るための気持ち』をつくるのに、ほぼ2ヶ月かかってしまいました。だって約2時間の放送。どこも気を抜けないほど見逃せない内容なんですもん。

さぁ書きますよ。全9回で長くなってしまいますが、よろしくお願いします。

2018年、ショパンの名を冠した新たなコンクールが誕生しました。
その名も『ショパン国際ピリオド楽器コンクール。』ピリオドとは古楽器の意味です。

今、ピアノと呼ばれているのはモダンピアノ。それ以前にあったのがフォルテピアノという今のモダンピアノの元になったピアノです。

ヨーロッパ各地から集められたフォルテピアノは19台。会場となるホールに次々と運び込まれます。全てショパンゆかりのもので、1829年のプレイエルが1番古いもの。1830年代にショパンがパリで出会ったのがこのピアノです。

そういう話を聞くと、ショパンって本当に実在してたんだなと思います。当たり前だけど。


『ショパンの着想の元になったピアノを弾くことで、彼の音楽の核心に迫りたい』それがこのコンクールの狙い。

この日は集まった19台のピアノから、審査員がコンクールに使う5台を選定する日。
選ぶのは審査に携わる一流のピアニストたち。トビアス・コッホ、ヤヌシュ・オレイニチャク。

フォルテピアノは現代のピアノに比べて音が小さく、音の減衰がはやい。でもその音色は現代のピアノにはない豊かさがあります。

選ばれた5台のピアノのうち、2台を所有するのはオランダ・エンスヘーデに工房を持つエドウィン・ブンクさん。フォルテピアノの修復家として知られた存在です。奥様はピアニストの福田理子さん。日本人の方ですね。

エドウィンさんのフォルテピアノコレクションは18世紀後半から19世紀中頃までのものが22台。このフォルテピアノ、すべてエドウィンさんの手でよみがえりました。まさにフォルテピアノの修復の魔術師。エドウィンさん、すごい。

エドウィンさん
「人はピアノの歴史を技術の発達と思い込んでいるけれど、かなりの誤解です。各時代にはそれぞれの味があるし、音のニーズがあります。」

中でも貴重な一台が、1829年ショパンがウィーンのコンサートで弾いたグラーフというフォルテピアノ。ペダルの中にモデレーターという音色を変える仕組みがついています。普通に弾くとハンマーが弦を打つけれど、モデレータを入れると弦とハンマーの間にフェルトが入り、ソフトな音色になります。

さらにグラーフは音を和やかにするために、2枚の響板が音を塞ぐように置かれていて、当時いかに繊細な音が求められたかが伝わってきます。


以前ショパン国際ピアノコンクールの記事を書きましたが、ファツィオリの越智さんが求めていたのはきっとこのような繊細な温かみのある音だったんですね。このドキュメンタリーを見て、越智さんがショパン国際ピアノコンクールで理想とする音色の意味がわかりました。当時の歴史も、そのときに聞いていた人々の思いも、そこまで考えて調律されていたんですね。

エドウィンさん
「人々がどれほど音を大切に思っていたかを知り、ニュアンスを細部まで追求すること。それが古楽器の魅力です」

2018年9月1日。2週間にわたるコンクールが幕を開けました。今回出場するのは、事前の審査を通過した世界9カ国30名。

さぁどうなるのでしょうか。
それでは続きはまた明日。

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