2019年4月30日放送。私は左手のピアニスト(7) 第1回 左手のピアノ国際コンクール『4歳の時に脳腫瘍を患い、右半身麻痺の後遺症。8年前に出会った思い入れのある曲で挑戦。』鈴木笙太さん

アマチュア部門に出場する鈴木笙太(すずき しょうた)さん、20歳です。家族4人と会場入りしました。このコンクールに強い思いで臨んでいます。

兵庫県神戸市に住んでいる笙太さんは週に4日、福祉作業所で働いています。4歳の時に脳腫瘍を患い、右半身麻痺の後遺症があります。

笙太さんが作業所のカフェで接客している様子が映し出されます。


幼い頃から右手のリハビリのため、ピアノを両手で練習していました。12歳の時、母親の勧めで左手の曲と出会います。左手だと自由自在に弾け、のめり込んでいたといいます。

元気に誕生した笙太さんは4歳の時、脳腫瘍が分かり、2度の重い手術に耐えました。

笙太さんのお母さん
「脳に水が溜まって、穴を開けて水を流すことをされた時に、自分の息子に穴を開けて、管が通ってるのを見たときに、今でも思い出すと悲しくなるんだけど、その治療の姿を見たときにつらかったですよね。でも小学校の時に『産んでくれてありがとう』ってね。そうやって言ってくれた時に、 この言葉が本当になるように支えていけたらいいなって、思ったっていうのはありますね。」

お母さん泣いています。
子供のことを思う親御さんの涙に、私も思わずもらい泣き。

小学生の時は、重い後遺症で言葉が出づらく、友達の輪に入れてもらえずに一人でいる時間が続きました。

笙太さん
「いじめられていた部分があって、その辺が苦しかった。葛藤だらけでした。入れてって言っても、入れてもらえなかったり。」

そうした辛い時間を笙太さんはピアノを弾いて過ごしてきました。


そして8年前、運命の曲と出会います。カッチーニが作曲したアヴェ・マリアです。

笙太さんの楽譜にはいくつも書き込みがあります。この8年、その時々に抱いていた感情をこの曲にぶつけると気持ちが楽になりました。素直に心を乗せた演奏が評判を呼び、この曲でコンクールに挑みます。

笙太さんを応援することでひとつになっている家族も、ここに来るまでは山あり谷ありでした。

お母さん
「もう試行錯誤だし、喧嘩もいっぱいあった。いろんなことがあって、今やっといい家族風に見えてる。あはは。」

兄弟の間にもうまくいかないことが続きました。2歳違いの弟、辰弥(たつや)さんです。

子供の時いじめられて友達がいなかった笙太さんにとって、辰弥さんだけが頼りでした。

お母さん
「追いかけてったもの。たっちゃんのこと。小学校の時はさ、しょうちゃんは友達がいなくて、『たつや、たつや』ってずっと追いかけてたから。振り切るような感じ 。」

辰弥さん
「僕的には目立ってほしくなかった。障害持ってるって言うのも、どっかで嫌やなみたいな。隠したいみたいなのがあって、お兄ちゃんの弟って見られるのが嫌やんって感じで。ずっと小学校はお兄ちゃんから逃げてたような所はあります。」

お母さん
「子供はやっぱり子供の輪に入りたいっていうのがあって、申し訳ないけどよろしくっていう部分と。あったかな。」

辰弥さん
「そうやな。確かに。」


2人の間の微妙な距離感はそれからも長く続きました。
両親はどうしても笙太さんのことが中心になり、辰弥さんは寂しさなど複雑な感情を抱いていたといいます。

お父さん
「ちゃんとフォローしたってな。」

辰弥さん
「わかってます。」

舞台袖では辰弥さんが傍らにいることにしました。本番前に舞台袖で手を触れ合う兄弟。


そして笙太さんの出番です。曲は、
『アヴェマリア』カッチーニ作曲、吉松隆編曲。

演奏後、舞台袖に戻ったとたんガッツポーズ。満足気な表情です。

辰弥さん
「良かったよ。」

笙太さん
「うまく弾けたんで。出る前にやろうと思ってたんで出たんで、やってやろうと。そんな感じです。」

辰弥さん
「しっかり弾けてて安定感があったなって思いますね。」

お母さん
「よかったよかった。自分の内から出してたよ。ありがとう、よかった。」

辰弥さん
「何もしてないけど、疲れた。」


そしてアマチュア部門大賞の発表です。

審査委員長の智内威雄さん
「はい、皆さんお待たせしました。そしてお疲れ様でした。もう審査員一同、感動の嵐で、本当。今も喋ってたんですけれど。皆さん全員がこの賞に値するのではないかというのが審査員一同の意見でした。でもその中から大賞は3人選ばせていただくことになりました。今はね、とりあえずその大賞の方の3人だけ発表させていただきます。演奏順にいきます。」

「一人目は木田なおみさん、 二人目は濱川礼さんです、3人目は久本久子さん。おめでとうございました。本当にね、すごい感動の嵐で、今でもまだみんなぼーっとしているんですけれども。以上になります。お疲れ様でした。ありがとうございました。」

笙太さんの名前は呼ばれませんでした。


お母さん
「今日頑張った、残念やったけどな。よく頑張ったよく頑張った。悔しいけどな。」

笙太さん
「もっと難しいの、弾かなあかんのかな。」

お母さん
「しょうちゃん、ここから一年また頑張って、またやってくれる時までに成長しておこう。」

笙太さん、うなだれて首を横に振り、呆然としています。力を出し切った笙太さんの挑戦は終わりました。

今日はここまで。続きはまた明日。

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