2019年4月30日放送 スラム街 希望のオーケストラ(2)『子どもたちは音楽に願いを託す』

昨日の記事からの続きです。


チャンスをつかめ。憧れの大学進学へ。

スラム街のオーケストラ永田さんとの出会いをきっかけに人生を変えるチャンスを掴もうとする子供がいる。トロンボーン担当のジョバニ・カビゴンくん19歳。3年間練習に打ち込んできた。

ジョバニはアドバイスを求め、毎日のように永田さんの元へやってくる。この春、高校を卒業するジョバニは、オーケストラの活動に注目した名門大学から演奏会に招かれている。そこで実力を認められれば、学費免除の特待生に推薦してもらえる。幼い頃からの夢だった大学進学が可能かもしれないのだ。

永田さんがつきっきりで教える。

ジョバニくん
「マサ兄さんはわかりやすく教えてくれるし、間違いを正してくれる。良い音を出すために手伝ってくれるし、本当に素晴らしいよ。」

ジョバニが練習を終えて自宅に戻るのは夜10時。両親は体が弱いため、働くことができず今は姉の収入が頼みだ。家族のためにジョバニは大学に進み、良い仕事に就きたいと考えている。

以前はスラム街を抜け出せないと諦めていた。しかし今チャンスをつかもうとしている。

大学進学への望みをかけた演奏会当日。サンカルロス大学。ジョバニは4時間も前に会場に着いた。緊張で汗が止まらない。

夢だった大学進学に繋がるステージへと向かう。会場にはおよそ300人の観客。大学の関係者も見つめる。演奏会が始まった 。指揮者は大学の教授。ジョバニの演奏が特待生の基準に達しているか見極める。

ジョバニは3年間の努力を演奏に込めた。力を全て出し切った。演奏後、自分の演奏はどう映ったのか指揮者である教授の元を訪ねた。

教授「大学の幹部に伝えておく。君の映像は特待生の基準を満たしている。本当に上手だ。」

ジョバニくん
「永田さんたち、セブンスピリットのおかげで大学入学の大きな助けとなりました。 大学のオーケストラと一緒に演奏できて 、大学の幹部に知ってもらえたのも本当に光栄なことです。」

ジョバニの人生の扉は今開こうとしている。

離れて暮らす母へ。少女は初めてに挑む。

スラム街にあるオーケストラの練習場。子供達はクリスマスコンサートに向け、練習を続けていた。フルートを担当するニコル。離れて暮らす母に演奏を聴いてもらうのを楽しみにしている。仕上がりは順調だ。

この日、ニコルは楽しみにしていることがあった。出稼ぎに行っている母に久しぶりに電話をするのだ。スマートフォンを親戚に借り、母が電話に出るのを待つ。母と通話中、姉と電話の取り合いになってしまった。すると母から思いがけない言葉が。

お母さん
「2月に帰るよ。2月。」

仕事で帰国が遅れ、クリスマスコンサートに間に合わないというのだ。

ニコルさん
「もう慣れました。お母さんは私たちのために働いてくれているのが分かるから。」

明るく振る舞うニコル。しかし。

ニコルさん
「本当のことを言うと、泣きたいぐらい悲しい。」

そういって泣き出しました。

ニコルさん
「お母さんの立場もわかるので大丈夫。」

コンサートまで11日。ニコルは練習に集中できなくなっていた。永田さんは練習を一時中断し、スタッフルームへ向かった。どうすればニコルがやる気を取り戻せるのか、気持ちを切り替える方法を考える。練習再開。永田さんはニコルに提案した。

永田さん
「フルートのソロパートをやってくれないかな?ニコル。」

ニコルさん
「オッケー。マサお兄さん。」

笑顔で返事をするニコル。永田さんはニコルに新たな目標を作ったのだ。ソロ演奏はニコルにとって初めての挑戦だ。演奏するのは映画ライオンキングから『愛を感じて』という曲。大切な人へ愛を届けたいという願いが込められている。

永田さん
「引いちゃだめだよ。前に出て行くような気持ちで。」

しかし思うように吹くことができない。ニコルは全体練習には参加せず、別の部屋へ移った。苦手にしている高い音を一人で特訓する。なかなか納得できない。

ニコルさん
「マサお兄さん、高音が出ないの。」

ニコルの悩みに永田さんが答える。

永田さん
「息の吹き方を変えてみたら?」

ニコルさん
「ありがとう。マサお兄さん。」

永田さん
「もうちょっと頑張ろうみたいな気持ちは生まれたと思います。頑張って欲しいですね。どうなるか本人はドキドキだと思いますけど。」

目標に向かってニコルは諦めることなく練習を続けた。

ニコルさん
「色々な課題があるけれど、私はたくましく成長しています。それを知ればきっとお母さんは喜ぶ。ソロはお母さんに届けたい。このソロを演奏する時は、なんだかお母さんが愛おしく思えるから。」

トランペット少年“半年ぶり”に父と再開。

コンサートの9日前、街にはクリスマスのムードが漂い始めていた。家の手伝いが忙しく思うように練習できない日が続いていたリアン。この日帰宅すると思いがけない人がいた。半年間行方が分からなくなった父が家に帰っていたのだ。

リアンくん
「お父さん起きてよ。」

父を起こしたりリアン。ずっと言いたかった一言を伝えた。

リアンくん
「お父さんコンサート見に来てよ。」

お父さん
「行くよ。仕事ないし。」

父はリアンの姿を見に行くと約束してくれた。

リアンくん
「僕にはお父さんがいないとダメなんだ。お母さんにお金を渡さないけど、僕はお父さんが大好きなんだ。」

この日の夕方、リアンはいつもより早く練習場にやってきた。練習の遅れを取り戻そうとしていたのだ。
でもなめらかに指を動かすことができないリアン。このままでは仲間と音がずれてしまう。永田さんがリアンを側に呼んだ。焦らなくてもいいと安心させた。

永田さん
「こうやって頑張って来てくれているので。これを続けて言ってくれたらもっともっと伸びると思う。頑張っていると思います。」

リアンは自分の力を信じていた。

リアンくん
「お父さんに僕の映像を見に来てほしい オーケストラでの努力の成果を見せたいんだ。」

願いよ届け!路地裏のコンサート。

いよいよクリスマスコンサートの日がやってきた。子供たちが一年の成果を見せる日だ。

練習場から自分の担当する楽器を運び出す 。子供達が演奏を披露するのはスラム街の中心にある広場。にぎやかなお祭りが大好きな街の人たち。演奏目の前で見られるコンサートを毎年楽しみにしている。演奏が始まる前から大勢の人が集まっていた 。

父と約束を交わしているリアン。観客の中に父の姿を探していた。初めてソロ演奏に挑むニコル。離れて暮らす母に届けようと練習を重ねてきた。指揮者の永田さんが登場し、コンサートが始まる。

力いっぱい演奏するリアン、曲の合間に父がいないか探す。ニコルのソロ演奏が近づいてきた。そして初めての挑戦をやり遂げた。リアンは最後まで全力を尽くした。

コンサート終了後、拍手と歓声。しかし父が姿を見せることはなかった。

リアンくん
「お父さんは仕事があるんだよ。今度来てくれるさ。今日はしょうがないよ。」

ニコルは努力を続けてきた成果に自信を感じるようになっていた。

ニコルさん
「ミスをしたわ。でもソロじゃなくて別の部分で。お母さんのことだけを思って、まるで目の前に人がいないかのように演奏したわ。」

クリスマス。オーケストラの練習場ではパーティーが開かれていた。子供達は音楽との出会いを通じて少しずつ成長している。

6年間、子供達を見守り続けた永田さん。ここで笑顔をさらに広げる決意を新たにしていた。

永田さん
「ちょっと遅いんですけど、自分の中でやっと覚悟ができた。子供らも成長して変化があったし、同じように私の中でも成長と変化があったと思うんですよ。それが自分の自信にもなっていたということだと思います。」

音楽と笑い声そして笑顔が絶えない場所。 スラム街のオーケストラには人々の希望が溢れている。



これで番組は終了です。

それまでは未来に希望を持てなかった少年が音大を目指すこと、学校にも行けず家のお手伝いをしながら練習に励む少年、お母さんが外国に働きに出ていて寂しい気持ちを押さえながらひたすら練習をする少女。何もかもが胸に響きました。もう一度、子供と一緒に見ようと思います。

元東京交響楽団の首席チェロ奏者の山本佑之介さんも『なんとかしなきゃ!』プロジェクトでミャンマーの国立オーケストラを率いて活動しております。
譜面を読めず、楽器の手入れも十分にできない……自腹で指導を続けて4年、そろわなかった音が少しずつ重なり、ハーモニーが生まれつつあります。

山本さんの詳しい記事はこちらに。

永田さんも山本さんも素晴らしい活動をされていて、ただただ尊敬。

素晴らしいドキュメンタリーでした。

こちらもよろしくお願いします↓

にほんブログ村 クラシックブログ チェロへ
にほんブログ村